金魚
うちには、両目のない金魚がいます。もちろん最初から目がなかったわけではありません。昨年十月のある朝、目がなくなっていたのです。ショックでした。一番かわいがっていた金魚だったのに。なぜこんなことになったのかわかりませんでした。でも、その後の観察で、どうやら同じ水槽内の乱暴な金魚にやられたらしいことがわかり、一匹だけ、違う水槽に移してやりました。そしたらその後二日くらいは、元気がなくじっとしていました。私は、食べないと死んでしまうだろうと思い、エサを口の近くに落としてやりましたが、だめでした。目が見えなきゃエサが食べられない。死んじゃうのかなあと、水槽の近くを通るたびに様子を伺っていました。そうしたら、ゆっくりと泳いでは角にぶつかって、移された水槽の広さを確かめているようでした。少し泳ぎ出したので、口の近くにエサを落としてみたら、少しでしたが食べたのです。その後も根気良く口の近くにエサを落としてやり、少しずつでしたが、何とか食事がとれるようになりました。
あの事件から一週間くらいたった頃でしょうか。水槽のふたを開けると音でわかるのか、水面に上がってくるようになりました。食べやすい位置にエサを落としてやると、前よりもたくさん食べられるようになったのです。そしてまたその数日後、エサが欲しいと水面近くにきて、パクパクしているようになりました。食欲も出てきました。目が見えなくなってしばらくは、時間がわからないようで、夜でも泳いでいる時がありましたが、今では時間もわかるようになったみたいです。朝八時くらいには起きて、九時までには食事をとり、午前中は泳いで午後は昼寝。夜はちゃんと眠っています。まるで目が見えているように感じることもあります。私達が、水槽の近くに寄って金魚を見ていると、こっちに寄ってきてくれるからです。それに、ポンプのチューブを上手によけて泳いでいるからです。
えらいものですねえ。もうすぐあの事件から三ヶ月たちます。とっても元気になりました。金魚の生命力にびっくりです。