オリンピックのような大舞台ですら、こむら返りを起こす選手がいて、しかもそれが単なる不運と考えられていることは、問題だと思われます。

こむら返りを起こしやすいということは、明らかに自己管理が悪いからなのです。運動をして汗をかいた後に飲み物を飲むことは必要なことですが、ただ一息に多量に飲むことは、それが冷たいものであればなおさら、こむら返りのような症状を起こしやすいのです。

つまり、汗の損失自体が、血分の不足状態を起こしていることになります。

筋肉が正常に機能するためには、血による滋養作用が十分にあることが必要になります。ところが、発汗過多の状態は血の滋養作用を低下させることになるのです。
したがって、汗と同じ成分を含むといわれている飲料水を十分に摂取することは意義深いのですが、それがガンガンに冷えている場合には話が別になるのです。急激に冷たいものを摂取することが、いかに身体にとって害になるか…

不摂生を重ねることによって、どんどん湿邪(注1)が停滞することになります。
そのために気・血・津液(注2)の正常な流れが阻害され、血の滋養作用が不十分になり、いっそうこむら返りを起こしやすくなるのです。

芍薬甘草湯という筋肉の痙攣を抑える有名な処方があります。この薬はこむら返りのほか、内臓の筋肉の痙攣、例えば胃痙攣とか種々の結石による痙攣性の痛みを治すのにもよく用いられます。

大事なことは、治療は薬ではなく、日常の節制がより重要だということを肝に銘じておくべきです。

(注1)
湿邪…外因としての湿を指す場合と、飲食の不摂生あるいは多湿環下での生活により体内に生じ病因を指す場合がある。
(注2)
津液…人体の構成成分の一つ。血と併せて陰液と呼ばれる。

(H)