後発品の場合、先発品と適応症にまったく同じでない場合がありますが、何故なのか、を調べてみました。後発品の発売に当たっては、先発品の物質特許と用途特許があるからです。
医薬品の場合いろいろな特許がありますが、今回は用途特許についてまとめて見ました。
<医薬品に関する特許等について>
医薬品の特許には、ご存知の通り、主に
①「物質特許」(医薬品の成分など、一定の使用目的を持った化学物質に対して与えられる特許権)
②「製法特許」(医薬品の成分など、化学物質の製造方法についての特許権)
③「製剤特許」(くすりの安定化など製剤上の工夫に与えられる特許権)
④「用途特許」(特定の物質に対する新しい効能・効果に与えられる特許権)
の4種類があります。
後発医薬品を開発、販売するためには「物質特許」と「用途特許」の期間が満了している必要があります。
2009年6月5日付けで厚生労働省医薬食品局審査管理課と医政局経済課課長連名通知で、下記の方針が示されました。
「物質特許」について「先発医薬品の有効成分に特許が存在し、
当該有効成分の製造そのものが出来ない場合には後発医薬品を承認しない」先発医薬品の一部の効能・効果や用法用量に特許(「用途特許」など)が残っている場合に、
それを除いた形で後発医薬品を承認する。
厚生労働省によるとそれまでは後発医薬品の承認審査では「物質特許」が切れていても「用途特許」が残っている場合は原則として、その成分の開発・販売の承認していなかったとの事です。
いわゆる“虫食い”効能の後発医薬品承認で後発医薬品の使用促進のための方針変更と言えます。
では「用途特許」とは、どう言う特許なのでしょうか?
化学品として合成された時点から、開発新薬(先発医薬品)・・製造販売承認臨床試験
まで特許期間20年+最大5年(臨床試験期間)のちに
・・新薬として発売・・特許期間延長(最大5年)・・特許期間満了した時点で、適応症の再審査が
行われます、この時点で後発品の発売となりますが、例外があります
特許期間満了までに新しい適応症が追加、新用法用量が、追加されている場合・・
新薬の用途特許により最大5年この新適応症、新用法用量の承認は不可となる
先発医薬品を発売した後に、新しい「効能・効果」や「用法・用量」に対して新たに臨床試験を行い、一定の効果があることを立証して承認を受ける場合があります。
(この新しい「効能・効果」や「用法・用量」が「用途特許」となります)新薬が承認された場合や、このように「効能・効果」の追加や「用法・用量」の追加取得後一定期間、製薬会社に再審査を受けるための市販後調査が義務付けられています。
この期間は基本的に先発医薬品の新適応症は後発医薬品では承認されません。ただし「用途特許」には最大5年間と言う期限が決められていますので、
最長5年後には(新薬が追加適応症取得後)後発医薬品においても適応症追加の申請が可能となります。
(逆に言えば、先発医薬品が新効能・効果を取得したら同効能・効果は最大5年間取得できない事になります)このような規約があるため先発メーカーは、発売後新たな適応症を取得し後発医薬品との差別化を図っていこうとする動きがあります。
以下に効能効果追加による特許延長の一例を記載しました。(ご参考)
最初の処分(承認)時に、効能による期間延長の機会を逃しても、新たな効能追加により期間延長した例
1 | ファモチジン錠 | 胃潰瘍に胃炎の効能追加 |
特許第1333173号 | 延長期間2年0月1日 | |
2 | ソファルコン錠 | 胃潰瘍に胃炎の効能追加 |
特許第1100489号 | 延長期間3年8月0日 | |
3 | メシル酸カモスタット錠 | 膵炎に術後逆流性食道炎効能追加 |
特許第1122708号 | 延長期間5年0月0日 | |
4 | レバミピド錠 | 胃潰瘍に胃炎の効能追加 |
特許第1490120号 | 延長期間5年0月0日 | |
5 | オザグレルNa注 | クモ膜下出血に脳血栓症の効能追加 |
特許第1395666号 | 延長期間4年4カ月27日 | |
6 | リシノプリル錠 | 高血圧症に慢性心不全の効能追加 |
特許第1705634号 | 延長期間2年8カ月2日 | |
7 | ベラプロストNa錠 | 慢性動脈閉塞症に原発性肺高血圧症の効能追加 |
特許第1569339号 | 延長期間5年0月0日 |
以上
(K)