昨年の9月に出産を終え、只今育児奮闘中です。

 実は、人生二度目の出産にして、二回目の帝王切開での出産となります。

 二人目は自然分娩でとの希望があったのですが、一度メスをいれた子宮は傷跡から破裂する可能性があるとのことで帝王切開を勧められました。
 どうもこの母子の安全を確保するというのは建前で、実際のところ分娩中のアクシデントが発生した場合に訴訟問題になることを嫌っての方針のようです。

 今日は、私の帝王切開体験を書いてみたいと思います。

 まず、予定帝王切開ということで、出産予定日の2週間前を目安に手術日が決まります。手術開始時間も病院によって大抵何時と決まっているようです。

【手術予定日前日】

 お泊りセットを持って入院開始。
 バス・トイレ付きの個室でルンルンな時間を過ごせる、と思いきや、入院説明、これからの予定、手術の説明、NST(胎児の心拍数をモニタリングして子宮に収縮が起こっていないかをチェックする検査)など、案外忙しくのんびりする間もなく夜に突入します。
 明日の手術に備えて19時以降は水しか飲めません。

【手術当日】

 もう何も食べられません。ひもじいです。
 朝からNSTで異常が無いことをチェック。
術中に粗相をしないよう浣腸を行います。
切開部分確保と細菌感染を防ぐため剃毛を行います。
今更ですが、出産とは恥も外聞もあったもんじゃないです。
こうやって女は逞しくなっていくんですね。
 手術が近くなると、術中の血管確保のために点滴が開始されます。
 次に、手術着に着替えます。
同時に、術後に血栓症(エコノミー症候群というやつですね)が起こりやすくなるとのことで、弾性ストッキングを着用します。
事前に看護師さんが足の太さをメジャーで測っていくのですが、サイズ違うんじゃないの!?というくらいキツキツでボンレスハムのようでした。
 その後、内診を行い問題がなければそのまま手術突入です。

【いよいよ帝王切開】

 手術の準備が整うと、お世話係の看護師さんが迎えに来ます。
この看護師さんに案内されて、手術室へ移動します。
歩いて手術室に移動するなんて変な気分です。
 手術室に入る前に専用スリッパに履き替え、シャワーキャップ(?)を被ります。
 手術室に入ると、手術着の医師と看護師に「今日は宜しくお願いします」と笑顔で迎えられます。
室内はBGMまで流れていて、なにやら和やかなムードが漂っています。
 手術台に横になると、裸にされ心電図のシールやら血圧計やらなんやらと体中に器具が取り付けられます。
 そして、ここからが本番。麻酔をかける時間です。
総合病院の場合、担当医ではなく麻酔医の先生がちゃんといてプロの技を見せてくれます(実際には見れませんが)。
下半身だけを麻酔状態にするための「脊髄くも膜下麻酔」という注射と術後の痛みを軽減させるための「硬膜外麻酔」という脊髄の側にチューブを入れて少しずつ麻酔薬を投与する処置を受けます。
 硬膜外麻酔のチューブを入れる際に痛みが発生するので、上記2種とは別に硬膜外周辺に注射で麻酔を投与します。
 注射は結構痛みがあるので、場所が場所なだけに「動かないで下さい!」とあちこちから手が伸びてきて体を抑えられます。
この痛みを軽減する麻酔はないのだろうか、なんて思ったりもします。

 麻酔が効くと切開の準備が始まります。
仰向けに転がされ体の上にシートを掛けられます。
一体何が行われているのかわかりませんが、なにやら世話しなく動きまわるスタッフ。音の感じから手術道具をセッティングしているようでした。
この時に導尿の処置をされたようです。
 さて、いよいよです。
医師が両脇に私の両脇に立ちました。カチャカチャとなにやらしています。
触られている感触もないので何をされているのかはさっぱりです。
一回だけお肉の焦げるような臭いがした時があり、あれはきっと電気メスというものが使われたに違いありません。
 お世話係の看護師さんは、結構細かく現状を教えてくれるのですが、手術の様子はちっとも教えてくれませんでした。
需要がないのかもしれません。
 そうこうしているうちに、ガポッと何かが出たような感覚があるのですが、あれが取り出した瞬間なのかは不明です。
それからちょっとして、赤ちゃんの元気な泣き声と「おめでとうございます」という声があちこちから聞こえてくるんですが、この一番いい瞬間が一番気分が悪くなるんです!
看護師さんが産まれたてホヤホヤの我が子を顔の側まで持ってきてくれるんですが、もう喜びとか感動とか味わっている余裕はなく、ひたすらやってくる吐き気を耐えに耐え、必死にありがとうございますというのが精一杯。
 苦悶に耐えているとお世話係さんが気付いてくれて、何かの薬が追加され徐々に回復。
さっきまでの気持ち悪さが嘘のようにすっきり。
気がつけば遠くで聞こえる赤子の泣き声。
こうなると徐々に込み上げてくるのが無事に産めたという安堵感と本当に産んだんだという実感。一歩遅れて感動を味わいます。
 取り上げてしまうと医師も安心するようで、お腹を縫いながら始まる雑談。
医師が雑談をするのは、手術が安全に行われた証拠なのだと後でお世話係さんが言っていました。

【術後の経過】

 手術が終わるとベッドで病室に運ばれます。
術後一日までは異常に備えて心電図のコードはつけっぱなしです。
術後三日は、傷の化膿を防ぐため、抗生剤を点滴します。
導尿は歩けるようになるまで続きます。
 こんな感じなので、術後すぐはコードや機器に囲まれ傍から見るとすっかり重病人です。
 術後当日は、全く動けません。体の向きを変える気力もありませんでした。
 硬膜外麻酔のお蔭で、安静にしていれば傷口の痛みはほとんど感じませんが、お腹に力をいれたり動いたりするとやはり痛いです。
 後陣痛に関しては、麻酔が効かないのであまり酷ければ坐薬の痛み止めを投与するとのことでした。
 飲水は術後一日目から、食事は二日目から流動食から始まり徐々に普通食に戻していきます。

 麻酔が効いているのを良いことに、ふらふらと一日目から動き回っていたところ麻酔が外れた三日目に傷口が熱を持ち、結局痛み止めを貰って飲むはめになりました。
 痛みを感じないからって動き回ったらいかん、ということですね。
皆さんお気をつけ下さい。

 如何でしたでしょうか。
未知の領域(?)帝王切開。
拙い文章ではありますが、大体の感じ伝わりましたでしょうか。
こんな感じなんですよ。
一応、それなりに命がけです。
周囲に帝王切開経験者がいらっしゃいましたら、是非労ってあげて下さい。

(I)