感冒は一般的にはウイルスの感染によることが多いと思いますが、ウイルスそのものに対する治療法がない以上、中医学の治療においては、あくまでもカゼの症状に応じて処方を考えます。

感冒は大きく二種類に分けられます。一つは悪寒を主症状とする「傷寒」と呼ばれるものです。もう一つは熱症状を主症状とし「温病」と呼ばれるものです。一般的には傷寒は冬に多く、温病は春から夏にかけて多く見られると言われているのですが、冷暖房が常識となっている環境で生活している現代社会では、季節との関係に固執することはないように思われます。

傷寒に対してよく使われる処方は『傷寒論』に記載されている麻黄湯、葛根湯、桂枝湯などの他に、荊防敗毒散、頭痛を主症状とするときに用いる川芎茶調散などがあります。

温病に用いる処方は、桑菊飲、銀翹散(天津感冒片)が代表的なものです。主症状は発熱ですが、この「熱」は必ずしも体温計の熱を意味しません。自覚症状として、ひき始めにまず喉が痛い、というカゼの場合はほとんどが温病と考えて良いようです。

冬に流行するインフルエンザのほとんどが傷寒のカゼだった時代には、カゼをひいたら葛根湯でも良かったのですが、夏に冷房で傷寒のカゼ、冬に暖房のために温病のカゼをひくという例も増えているようです。また暖冬だと、冬のカゼなのに温病のカゼをひく人も多く、地球の温暖化は、人間のカゼまで変えてしまったのでしょうか。

人間の身体は気候や環境に大きく左右されるものです。体調管理には十分気をつけましょう。

(H)