私の祖母は、仕事一筋、自営業で82歳まで働きました。
昔人間ですから、金銭管理は帳面に手書きをし、計算はソロバンで行っていました。
また、人前に出るので常に身なりはきちんとしていました。
店先でお客さんとよく話し込んでいましたが、私も感心してしまうほど話し上手でした。
そのためか実年齢よりも若く見えました。
そんなしっかり者の祖母でしたが、ほとんど外出したこともなく、趣味もなかった為、仕事をやめてしまうと、寝転がってテレビを見ているばかりになってしまいました。
毎日のように誰かと話をしていたのに、家族以外の人と触れ合うこともなくなりました。
何かに対する『やる気』を持たなくなったせいか、
身なりがだらしなくなり、
昼夜逆転してしまう、
「次は何をしたらいい?」と日常生活ですべきことがわからないためその都度聞くようになる、
さらには食事をすることを忘れてしまう…
仕事を辞めて一ヶ月後、ついに家族の名前さえわからなくなり、攻撃性が出てきて手に負えない状態となってしまいました。
仕事を辞めて程なくしてから“認知症”の症状が出てきてしまった…とびっくりしていたら、あっという間に症状が進行してしまったというこの出来事は、現実なのか?と疑いたくなるほどでした。
その後、施設に入ったことで話し相手が沢山でき、笑顔を取り戻し、活動性が戻ってきました。
(本人は施設の方や入居者の方が、自分の店の従業員やお客だと思っていたようでした)
完全に私や家族のことなど忘れてしまったけれど、施設が『自分の店』だと思い込み、自分が仕事をしているという『やる気』を持ったことで、落ち着きを取り戻してくれました。
その後は、だんだん体力が低下していき、昨年86歳で亡くなりました。
いくつになっても、何かに対する『やる気』を持ち続けることが、最後まで“若々しく”生きる秘訣だと思いますが…いかがでしょうか?
(S)