皆さんは、「加齢黄斑変性」をご存知でしょうか。
「加齢」とともに「黄斑」が「変性」する目の病気です。
眼科の処方せんを受けていると、相当数の患者様が患っており、稀ではない疾患であることを認識します。
加齢黄斑変性は、年齢を重ねるごとに多くみられ、50才以上の約1.2%(80人に1人)が罹患しています。私たちがものを見る時に重要な役割を果たしているのが「網膜」です。カメラに例えるとフィルムにあたる部分で、光を認識して脳に伝えています。その網膜の中心部分が「黄斑」です。
加齢黄斑変性には「萎縮型」と「滲出型(しんしゅつがた)」の2種類があります。「萎縮型」は加齢とともに黄斑の組織が萎縮する現象で、進行が緩やかで、急激に視力低下を来すことはありません。治療の必要はありませんが、定期的な検診が必要です。
「滲出型」は網膜のすぐ下(脈絡膜)に「新生血管」ができることにより起こります。新生血管は正常ではない非常にもろい血管で、成分が漏れ出たり、出血を起こし、黄斑にダメージを与えます。黄斑が変化すると、見え方のゆがみや視野中心部の見えにくさが生じます。
滲出型の治療法としては、抗VEGF薬という新生血管を鎮静化する薬を目に注射する方法が一般的です。新生血管の成長や漏れ出る血液中の水分を減らします。抗VEGF薬には、ルセンティス、アイリーアなどがあります。目に注射というと、とても怖い気がしますが、注射針が入る感覚はあるものの、痛みはほとんどないようです。抗VEGF薬により視力が回復しても、継時的に視力低下が進むため、数か月おきに注射を打ち続ける必要があります。今ご紹介した「抗VEGF療法」の他に、光に反応する薬剤を体内に注射し、それが新生血管に到達した時に弱いレーザーを照射して新生血管を破壊する「光線力学的療法」、新生血管をレーザーで焼く「光凝固法」などがあります。新生血管の場所や大きさによっては、早期発見により治療後の見えない部分を最小限に抑えることができるため、日ごろから片目ずつ、ものがゆがんで見えないかチェックすることが大切です。
また、加齢黄斑変性への進行を予防するために、①外出時にサングラスをかけて青色光から目を守る②禁煙する③バランスの良い食事を心がける(緑黄色野菜に多く含まれている「ルテイン」が有用)
以上の事も重要です。
(K)