「ヴあぁ…」
鈍い唸り声とともに月曜の朝が始まる。体中が痛い。そしてダルい
医師の診断を得るまでもない。間違いない、筋肉痛だ…
こんな痛みはもう嫌だ。ソフトボールなんて二度とするものか…
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6月4日、日曜日
第2回エンゼル薬局ソフトボール大会の開催日である。今回は社内2チームによる対抗戦だ。参加者は22名。桑名九華公園野球場向け、家を出るメンバー。東は尾張旭、西は名張。
名張勢。彼、彼女ら5人のソフトボールに対する思いは強い。せっかくの休日に100kmも球場に向け移動しているのだ。近鉄特急に同乗した他の誰もがそんなことは想像していなかっただろう。
集合時間の13時。グラウンドに沢山のメンバーが集まる。メンバーの子供も走り回っている。賑やかだ。冷えたドリンクも大量にある。楽しい。だが、おかしい。揃っていないメンバーがいる。道具も到着していない。
まぁ、仕方ない。準備をしよう。ホームからベースまでの距離は18.29m。ざっくり20ヤードと言うところか。ここはエンゼルゴルフ部の出番だ。数名で速やかに歩測を行う。ベースを設置し、ラインを引く。素晴らしい、あっという間に準備ができた。
まだ来ない。仕方ない、相撲をしよう。スニーカーで砂をなぞる。素晴らしい、あっという間に土俵ができた。ゴルフ部に柔道部が挑む。はっけよいっ。「あっ!」あかん、腰の不安をゴルフ部が訴える。相撲は中止だ。「あっ!」大きな荷物を抱えた影が見える。
遅れていた名張勢と、それを迎えに行っていた道具班が到着した。遅れた事情を聞く。「なん…だと…!」名張勢のうち数人が桑名を乗り越し、名古屋まで行ってしまっていたそうな。近鉄特急に同乗した他の誰もがそんなことは想像しなかっただろう。
プレイボール!!
13時40分。多少のトラブルがあったものの、無事に試合開始が宣言される。試合開始前に主審の専務より特別ルールが発表される。「女性は三振無し、当たるまで」、「ランナーが三塁に来たら代打主審」(代打主審の機会は三度あった。詳細は略。察し…)。試合が進むうちに説明になかったルールもどんどん施行される。不思議セーフ、2アウトチェンジ、4アウトチェンジ、不思議満塁などなど。主審の名采配?により両チームは接戦を繰り広げる。
AチームキャプテンのサッカーマンとBチームキャプテンの柔道部のじゃんけんをサッカーマンが制す。結果、我々Bチームが先攻となる。
ベンチで円陣を組む、「行くぞー!」「おぉー!」。なかなかの団結力だ、行ける気がする…なんて思っているうちに1番バッターの柔道部がベンチに戻ってくる。どうした…いつの間にか三振していたようだ。おい。え?あれれ。んー。あっという間に3アウトになってしまった。さぁ、守ろう。気持ちを切り替えなくてはいけない。
後攻Aチームの1番バッターはサッカーマン。ソフトボール大会でサッカーのユニフォームを着ている。サッカーが大好きなのだろう。彼は来月退職し、海外に渡る予定だ。今回のソフトボール大会はそんな彼の壮行会も兼ねている。私は彼のチャレンジを応援しているし、祝福している。敵チームではあるが、このソフトボール大会でも活躍して欲しいと思っている。第一打席、彼は見事なバッティングを見せた。おめでとう、ナイスバッティング。その後も彼は打ち続けた、1打の凡打を除き、他の全てで長打をたたき出した。前言撤回である。祝福はする、だが打ち過ぎだ、許さん。
Bチームの初回こそ振るわなかったものの、両チーム要所で好プレーが飛び出す。安定感のあるバッティングを見せる者、鉄壁の守備を見せる親子ショート、満塁ランニングホームラン、やたら打つ女性薬剤師、早々に肉離れ、前日の飲み会の疲れ、レフティレフトのナイスキャッチ、転ぶ中日ファン、オーバースローピッチング、10人守備、かわいい、こむら返り、突然現れた名レフトガール、立ち尽くす柔道部などなど…
気づけばあっという間に最終回の7回が終了。結果は12対12の同点。ナイスゲーム!
ふと時計に目を落とす。15時…打ち上げの予約は17時半…終われない……
主審が声高に宣言する「延長戦!」
その後、我々は時間一杯まで延長を重ねる。
11回にも及ぶ試合を24対20で制したのはAチーム!
我々Bチームは負けた。悔しい。
さぁ、いつまでも悔しがっていてはいけない。試合の後は打ち上げだ。
グラウンドを整備して急いで居酒屋に移動しよう。
打ち上げの会場に到着する。落ち着いた佇まいで素敵な店だ。
参加者のほとんどが打ち上げに参加している。ん。むしろ増えている。
打ち上げの雰囲気も良かった。旅立つサッカーマンが挨拶し、皆が激励する。
サッカーマン、まじグッドラック!
そして乾杯。私はトマトジュース(グラス)で乾杯に参加する。断言しよう、ソフトボール後のトマトジュースは絶品である。
5杯目のトマトジュース(ジョッキ)を飲み干した頃、打ち上げが終了した。
二次会に行くメンバーを横目に私は帰宅する。
寝よう。ただただ寝よう。
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月曜の仕事を乗り切った。高いところに手を伸ばす度に唸り声をあげる私の隣で、応援先の店舗の同僚がしゃがむ度に唸り声をあげながら髪の毛を触っていた。私たちは昭和59年製のボディを過大評価し過ぎていたようだ…
こんな痛みはもう嫌だ。ソフトボールなんて二度とするものか…
帰宅し、いつものように息子と風呂へ向かう。服を脱ぐと息子が私の左内ももを指さしている。
驚いた。こぶし大にくっきりと内出血している。
心当たりはある。やたら打つ女性薬剤師の球を捕球し損ねて、体に当てたところだ。
悔しい。次こそは取ってやる。そして絶対に勝ってやる。
よし!第3回ソフトボール大会が楽しみだ!
PS:レフティレフト様へ。今回のイベントを企画、準備して頂きありがとうございました。
(多度駅前店 I)