内服薬のみならず、点眼薬、吸入薬などにも配合剤が存在します。内服薬では降圧剤のペア、降圧剤と脂質異常症治療剤、糖尿病治療剤、鎮痛剤など多くの配合剤が上市されています。 点眼薬においては作用機序の異なる緑内障治療剤が配合されています。
単剤×2ではなく、配合剤にするメリットとして、
① 使用薬剤数の減少
② 服薬アドヒアランスの向上
③ 経済性の向上(同一成分量で薬価が安くなる)
などが挙げられます。
①に関連して、使用薬剤数が増えた時、そして増えた薬剤を服用する時、少なからず患者さまに心理的なマイナスが生じます。使用成分数が増えていても使用薬剤数が変わらないことで、そのマイナスを軽減できます。
また、配合点眼剤ならではのメリットがあります。
① 2つの点眼剤を点眼する際には5分以上の間隔を空ける必要がありますが、配合剤ではその必要がなく、点眼時間の短縮、点眼の手間が軽減されます。
② 点眼剤には防腐剤が含まれており、防腐剤が角結膜を障害します。配合剤にすることで、点眼回数が減り、眼表面への防腐剤曝露の頻度を低くすることが可能です。
配合剤のデメリットとして、
① 副作用が発現した場合に、原因成分がすぐに分かりづらい
② 成分ごとの細かな用量調節が困難
③ 配合成分と同種同効薬を重複投与・服用する可能性がある
などが挙げられます。
緑内障治療配合点眼剤では、プロスタグランジン関連薬(PG)、β受容体遮断薬(β)、炭酸脱水酵素阻害薬(CAI)のうち2成分が配合されています。
・(PG+β)・・・(ザラカム、デュオトラバ、タプコム)
・(β+CAI)・・・(コソプト、アゾルガ)
時に(PG+β)+CAI(単剤)=3成分併用の患者さまの処方が、PG(単剤)+(β+CAI)=3成分併用に変更されるケースがあります。
そのワケは?
βの持続性にあります。配合剤に使用されているβは、チモロールマレイン酸塩であり、通常は1日2回点眼することで24時間眼圧を下降させます。(β+CAI)の用法は1日2回であり、効果の持続性に問題はありませんが、(PG+β)の用法は1日1回であり、βの効果持続が不十分になる可能性があります。チモロールマレイン酸塩単剤では、ゲル化による24時間持続製剤が存在するのですが、PGとの配合は難しいそうです。
本年1月に「ミケルナ配合点眼液」(PG+β)が発売されました。βにはカルテオロール塩酸塩が用いられ、アルギン酸の添加による持続化が図られています。1日1回という最少の点眼回数で24時間の効果持続が期待できます。
チモロールマレイン酸塩とカルテオロール塩酸塩の眼圧下降効果の差が気になるところですが、投与初期ではチモロールマレイン酸塩が勝るものの、投与8週で同等の効果となるようです。また、防腐剤にはベンザルコニウム塩化物(BAC;細胞毒性が高いとされる)を用いず、ホウ酸とエデト酸ナトリウム水和物を採用しています。
このように患者さまにとって有効性、安全性、経済性に優れた製剤がますます増えていくことを期待しています。
(生桑店 K)