私たち薬剤師がお薬を患者さんにお渡しすることを「 投薬する」 といいます。実はこの投薬 という言葉の起源は一説には仏教と深く関わりがあるそうです。
先日、京都のお寺で 涅槃図 と言うものを拝見する機会がありました。涅槃図とはまだ人間だった頃のお釈迦様が亡くなられる場面を描いた図で、横たわるお釈迦様の周りを 弟子たちや仏様、動物や虫に至る様々な存在が嘆き悲しんでいる様子が描かれます。既に80歳という高齢であったお釈迦様ですが、その死因は老衰ではなくなんと食中毒。インドでの布教の後ふるさとに帰る途中、信者から御布施として差し出されたキノコにあたってしまったそうです。
さて、この涅槃図には木に引っ掛けてある袋が登場します。これはお釈迦様の危篤をしり、お釈迦様を産んですぐ亡くなって仏となっていた母、摩耶夫人が我が子を救うために天から投げた薬袋なのです。
この逸話こそが 投薬 の語源なのだそうです。まさに字の通り、薬を投げてますよね。
残念ながらこの薬をお釈迦様は服薬することなく亡くなってしまいます。死期を悟ったお釈迦様が自らの意思で口にしなかったとも、木の高いところに引っかかってしまったのでネズミが取りに行ったところを猫が追いかけて食べてしまったから間に合わなかった等々、様々な説や解釈があるようです(余談ですが数多く描かれている動物の中に猫が居ない理由とも。例外有り)。
普段何気なく使っていた投薬という言葉にこんな背景があったとは知らずとても驚きました。
皆様も涅槃図をご覧になることががありましたら、是非薬袋を探してみてくださいね(描かれていなかったらすみません…)。
画像の涅槃図は京都府亀岡市の鏡智山瑞雲院大円寺様のご厚意により、当ブログの為に特別に掲載許可をいただいたものです。転載はご容赦ください。
かみえび店 I